「墓じまい」や「永代供養」を考えるとき、私たちはどうしても、その手順や費用、手続きといった実務的な側面に心を奪われがちです。しかし、その一つひとつのステップには、故人を敬い、心を繋ぐための、深く温かい仏教的な意味が込められています。
今回は、皆様がこれから臨むかもしれない儀式の、その「心」の部分に光を当ててみたいと思います。 この意味を知ることで、一連のプロセスは単なる「作業」から、尊い「ご供養」へと、その姿を変えるはずです。
1.「閉眼供養(魂抜き)」〜 “ありがとう”を伝える、感謝の儀式
墓じまいの際に行う「閉眼供養(へいがんくよう)」は、しばしば「魂抜き」とも呼ばれます。これは、お墓から魂を追い出すような、冷たい儀式では決してありません。
これまで永い間、風雨に耐え、ご家族とご先祖様を繋ぐ場所であり続けてくれた墓石。その墓石に対して、「永い間、本当にありがとうございました」と心からの感謝を捧げ、その役割を終えていただくための、感謝の儀式なのです。 この供養を通じて、魂は安らかに墓石から離れ、次の安住の地へと移る準備を整えます。そして、墓石は「供養の対象」から、ただの「石」へと還っていくのです。
2.「納骨法要」〜 “ようこそ”と迎える、安住の儀式
閉眼供養を終えたご遺骨を、永代供養墓など新しい場所へ納める際に行うのが「納骨法要(のうこつほうよう)」です。 これは、故人様の魂を新しい住まいへ「ようこそ」と温かくお迎えし、「これからは、この安らかな場所で、お寺が永代にわたってお守りします」とお誓いする、歓迎と安住の儀式です。
読経の声が響く中、ご家族と住職が共にご遺骨を納める。その厳かな時間のなかで、故人様は仏様の慈悲の光に包まれ、永代の安らぎを得るのです。ご家族にとっても、大切な方の新しい門出を祝い、未来への安心を確信する、大切な節目となります。
3.「モノ」への供養から、「心」の繋がりへ
「閉眼供養」で感謝と共に一つの役割を終え、「納骨法要」で新しい安住の地を得る。 この一連の流れは、私たちの供養のあり方が、物理的な「モノ(墓石)」への執着から解放され、より純粋な「心」の繋がりへと昇華されていくプロセスでもあります。
お墓というかたちが変わっても、故人を想う心、ご先祖様から繋がる命の尊さは、何一つ変わりません。むしろ、物理的な負担から解放されることで、より純粋な気持ちで故人と向き合えるようになるのです。
■一つひとつの手順に、心を込めて
周遍寺では、これら一つひとつの儀式が持つ大切な意味を、ご家族の皆様にお伝えしながら、心を込めて執り行います。単なる手続きとしてではなく、故人様とご家族の心に残る、尊い時間として。
儀式の意味について、ご不明な点があれば、どうぞ何なりとお尋ねください。 皆様が心からの納得と安心を得て、大切な一歩を踏み出せるよう、誠心誠意お手伝いさせていただきます。